靖国神社のみたままつり

靖国みたままつり、露店が消えた 若者らトラブル急増:朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/articles/ASH7D5630H7DUTIL00N.html

だそうである。
新卒で務めた会社が市ヶ谷にあった。靖国神社に歩いて行ける場所だった。広告映像の制作会社だったので、スタッフも若く、会社の仲間と、みたままつりに行った。
露店がたくさん出ていて、金を鳴らしながら「見なきゃ損だよ!」と、本当に損をしてしまうような気持ちにさせる見事な演出で、わたしは会社仲間とともに、ある見世物小屋に入っていった。
河童の展示や、ろくろ首の展示は、子供だましだった。
幼い頃から生ものしか食べない山口百恵のような女性と宣伝文句にあった女性は、太った中年のおばさんだった。
そのおばさんは、観客の前に立つと、軍鶏をわしづかみにして、その首を自分の口で、食いちぎったのだった。
あまりのことに唖然とし、おばさんが山口百恵に似ても似つかないことなど、どこかに吹き飛んでしまった。
頭が取れた状態の軍鶏の首がくねくねと動いていた。
一緒に見た仲間は、しばらくその話題でもちきりだった。
おばさんは、普段はどんな暮らしをしているのだろう?
ものすごくリッチだったりして?
究極の選択で、おばさんの職業に就くのはどお?
広告畑に集まってくる人間は、みなそれなりに個性的で、ユニークな発想をする。
おばさんの職業はどう考えても究極の選択だった。
第一、わたしたちは、しばらくの間、鶏肉が食べられなくなった。

靖国神社には子供の頃にも母に連れられて行ったことがある。
思想的にあれこれ問題のある場所だと知ったのは、高校生くらいだったろうか。
みたままつりに関しては、靖国のあれこれ難しい問題よりも、おばさんの究極の職業の方が気になった。
今考えると、おばさんは知恵おくれだったかもしれない。(差別発言と思われるかもしれませんが。)他に選択の余地があれば、あるいは、同じくらい稼げる何かほかの職業があればと言った方がいいか、年に数回だったかもしれないが、鳥の首を食いちぎる見世物を生業とはしなかったように思う。

靖国神社。去年の夏にも足を踏み入れた。遊就館で映画も見た。混んでいることに驚いた。気の毒な理由で戦争をはじめてしまった日本の姿を切々を解説する映画に、不賛同ながらも、ある種の切実な何かを感じもした。

靖国神社、A級戦犯が祀られている。

このせいで、この神社はねじれている。
天皇がお参りをしなくなった神社なのだ。「天皇陛下万歳、靖国で会おう!」というのが、よかったのか悪かったのかはさておき、靖国神社に天皇がお参りしないというのは、その物語に殉じた人たちにとって、気の毒なことのように思う。
が、天皇がA級戦犯を許すはずがないのだ。
なぜなら、A級戦犯こそが、天皇の戦争責任を代わりに背負った(はず)だったからだ。
どこで何をどう間違ったのか?子孫は気でも違ったのか?
A級戦犯が罪を背負うのを辞めるくらい逆賊なことはないだろう。

かくして、靖国神社は、靖まらない神社となった。

 

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